3 ダニエル書概論

 

動画はご覧いただけましたでしょうか。

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以下、振り返ってみます。

 

(画像と音声を引用)

 

1 物語は第一次バビロン捕囚(前605年?)直後から始まります。

王族らの中から優秀な者が選抜されてバビロンに連れて行かれます。ダニエル、シャドラク、メシャク、アベド・ネゴが含まれています。この書は、彼らが征服者の国でどのように希望を保ち続けたのかを記しています。

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2 ダニエルと友人たちのバビロンでの物語(1-6章)と

ダニエルが見た「将来」についての幻(7-12章)です。

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3 構成上の特徴

1章は、イスラエルの民の言葉ヘブライ語で書かれています。

2-7章は、当時の世界共通語であったアラム語で書かれています。

8-12章は、再びヘブライ語に戻ります。

2-7章が独立したセクションであると同時に、この後の章を理解するうえでの重要性を示しています。

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4 1章はダニエル書の前半の物語の背景を紹介しています。非常に優秀だったダニエルと友人はバビロンの宮廷で仕えるために召されます。

ユダヤ人のアイデンティティを捨て、トーラーにある食物規定を捨て、バビロン人たちと同じものを食べるように圧力」が加えられます。バビロナイズの圧力です。彼らをそれを拒み、トーラーに忠実であったためピンチに陥ります。しかし神は彼らを救いだし、バビロン王によって昇進させられました。「トーラーへの忠実によって高められる」。

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5 このアラム語のセクションはシンメトリーのある見事な構成になっています。

2章 王の夢———————————7章 ダニエルの夢

3章 燃える炉——————————6章 ライオンの穴

4章 ネブカドネツァルの高ぶり――5章 ベルシャツァルの高ぶり

まず2章はネブカドネツァルが見た夢の話です。ダニエルしかその夢の意味を解き明かせる者がいませんでした。それは、4種類の金属からできた巨大な像の夢で、一連の王国を象徴していて、頭の部分はバビロンです。ところが岩が飛んできて、その像を粉々に砕き、その岩は大きな山になりました。これは、ダニエル書に出てくる沢山の象徴的な幻の最初のもので、後から出てくる幻の基本的なストーリーを紹介しています。ダニエルはこの像が「バビロンに続く一連の王国」を表していると解き明かしました。そのすべてが神の造らた世界を暴力で満たします。しかし「いつの日か神の王国は彼らの前に立ちはだかり、すべての傲慢な国々をひれ伏させ、正義を以ってこの世界を癒し、神の支配が行き渡るようにする」と言ったのです。

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 6 3章には、ダニエルの3人の友人が巨大な像を拝むことを拒んだ有名な話が出てきます。この像は2章に出てきたような、王とその帝国の力を象徴しています。3人は燃える炉の中に投げ込まれますが、神は彼らを救いだし、この神こそ真の神だと知った王は、彼らを称賛します。

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7 バビロンの2人の王、ネブカドネツァルとベルシャツァルのストーリーです。2人とも巨大な帝国の上に立つ者として非常に高ぶっていました。そこで神は、この2人の王に夢と幻で警告をお伝えになりました。これらも解き明かせるのはダニエルだけでした。ダニエルは彼らに神の前にへりくだるように言いましたが、彼らは傲慢にも逆らいまいた。そのためネブカドネツァルは狂気に打たれ、野の獣のようになりましたが、その後神に対してへりくだったっため、人間性を取り戻し、再び王位に就きました。これとは対照的にベルシャツァルはへりくだることができませんでした。そして警告されたその日に暗殺されたのです。

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8 この2つの話は、創世記1-2章や詩編8編で、人間が「神のかたち」、また「世界の王」として描かれていることも思い起こさせます。この世界の真の王である神は、人間にこの世の鳥や獣を神のために治める権威をお授けになりました。ところが人間が築いた王国はそれを忘れ、神に反逆し、自分を神とする時には、人間以下の凶暴な獣のようになり、神の裁きを招くことになるのです。

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9 6章は3章と対になっています。ここではダニエルが王を神として崇めることを拒否したために迫害されます。そのため3人の友人たちと同様、死を宣告され、ライオンのいる穴に放り込まれます。しかし神はダニエルを獣から救い出し、王は神をほめたたえ、ダニエルを称賛しました。

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10 7章は2章とペアになり、この書のテーマが集約された中心的な箇所です。また夢の話ですが、今度はダニエル自身の夢です。なぜか今回は彼にはその意味が分からず、み使いに説明してもらわねばなりませんでした。彼が見たのは四つの獣です。ライオンのようなもの、熊のようなもの、翼のある豹のようなものが出てきました。これらはみな、驕り高ぶった王国を象徴しています。そして最後に現れた恐ろしい獣は、非常に邪悪な帝国を表していて、沢山のを持っていました。これは旧約聖書に共通する王の象徴です。そのうち、ある一本の角が生えてきましたが、これは「自分を神に勝るものとし、神の民を迫害する傲慢な王」を表しています。ここで「人の子」と呼ばれる存在が登場しますが、この人は神の民を象徴しながら、同時にダビデの血筋から生まれる彼らの王も象徴しています。それから突然「年を経た方」という存在が現れ、王国を建てます。そして恐ろしい獣を滅ぼし、「人の子」を雲の上に引き上げ、神の右の座に就かせ、共に国々を治めさせるのです。

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11 ここで、ダニエル書の前半のおさらいをしておきましょう。

迫害にもかかわらず、信仰を貫いたダニエルたちの3つのストーリーは、苦しみを受けているすべての神の民に希望を与えるものです。

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12 彼らは、神に反逆し獣のようになった人間の王国のゆえに、苦しめられました。

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13 ですから、これらの幻は、神がご自身の王国をたてて世界を治め、神の民の苦しみを取り去ってくださるのを忍耐強く待つようにと励ましているのです。

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14 ここで浮かび上がる疑問は、神はいつそれを成し遂げてくださるのかということです。最後の3つの幻がそれを探求していきます。

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15 8章でまたダニエルは7章で出てきた、最後の2つの獣の幻を見ます。しかし今回は、それは雄羊の形を取っており、メディアペルシャを表していました。次に、ギリシャを示す山羊が現れますが、この山羊から多くの角が生える中、一つひと際大きな角が生え、それは7章の邪悪な王を象徴しているのです。彼はエルサレムを攻撃し、自分を神より上の者と見做し、神殿に偶像を運び入れて冒瀆します。しかし最後には、神は彼を滅ぼし、ご自身の民と王国を高く上げてくださるのです。

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16 9章で、ダニエルはこれらのことがいつ起こるのかと、気が気ではなく、エレミヤ書を読みました。そこには捕囚は70年しか続かないと書かれていました。ダニエルにとって捕囚からもうすぐ70年が経っていたので、彼は神に早く約束を成就してくださるようにと願いました。しかしみ使いが現れ、「イスラエルの罪と反逆は今も続いているので、捕囚の期間はエレミヤに告げられた長さの7倍になる」と告げたのです。ダニエルは非常に動揺しました。そして最後の幻を見たのです。

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17 またもや王国に次ぐ王国です。ペルシャギリシャアレクサンダー大王、そしてその後も、王たちが続いています。いずれも最終的にはエルサレムを侵略し、神殿に偶像を設置し、自らを神の上に置く「北の王」に繋がっていく流れです。しかしこの王も突然滅ぼされるのです。

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18 これらの幻の意味については、今日も議論が尽きることはありません。

多くの人は、紀元前160年代のシリアの王であるアンティオコスがしたことと明確な関連があると考えています。彼は多数の信仰深いユダヤ人をエルサレムで殺し、神殿に偶像を設置しました。また、これはのちのローマ帝国エスの死刑執行と、西暦70年のエルサレム神殿の陥落を指しているのだと考える人もいます。さらに、エスが再臨する時の出来事を指しているのだと考える人もいます。

しかし、幻に出てくる象徴や数は、いずれの解釈にも完全には合致しません。それはつまり、そのすべてが正しいという可能性もある、ということです。

ダニエル書はこの後のすべての世代の神の民に希望を与え続けているのです。アンティオコスの時代も、その後の時代もそうでした。だから、イエスエルサレムでダニエル書を引用しながら、抑圧者と対立したのです。そしてまた、黙示録を書いたヨハネもダニエルの幻を彼の時代のローマに当てはめて語り、さらに未来のすべての抑圧者となる国々にも当てはめました。

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19 つまり、ダニエル書とは、すべての時代の読者がその中に「似通ったパターン約束」を見出すことができる書です。そのパターンとは、人間とその王国が自分たちの力を誇り、善悪の基準を自分たちで決め、神を真の王として認めようとしない時、凶暴な獣のようになる、ということです。しかし同時にダニエルは、いつの日か神がご自身の王国をもたらすことによって獣を打ち負かし、ご自分の民を救われると約束しています。

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20 このように、この書はすべての時代の人々に、神に誠実であり続けるよう励ます希望のメッセージを語っているのです。

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21 これがダニエル書です。

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